負動産化する残酷な現実 これだけかかる空き家のコスト②

空き家の保有にはコストがかかる。
まずは、一般的な宅地では市町村税の固定資産税、都市計画税が土地・家屋合わせて年5~6万円かかる。
売れないような土地でも固定資産税がゼロになることはなく、家屋の固定資産税評価額はどんなに築年数が経過しても新築時の二割未満に下がることはない。
万一の為火災保険に加入すれば最もシンプルなもので一万円期間1年から5万円程度かかる。

家屋や敷地の手入れが不十分だと、周囲の環境を悪化させる。動物が住みついたり、不審者が侵入したりするほか、放火される危険性もある。
15年2月に施行された空き家対策特別措置法では、市長村が倒壊などの危険がある空き家を(特定空家)に指定すると、固定資産税計画額を6分の1とする。
住宅用地の特例から外れ、固定資産税負担が大幅に増大する。

管理の為には月に1回程度、現地につく必要があるが、こうした労力を払えない場合は、現地の不動産業者などが提供する空き家管理サービスなどを利用すると月一万程度かかる。
建物を解体するには、木造住宅で現在、坪当たり4万~5万、軽量鉄骨造の建物で5万~7万程度が相場だ。
40坪の木造なら160万から200万円かかる。問題はこの更地をどうするかだが、30~40代の住宅取得層が購入するとは考えにくい場合は、近隣住民などに引き取ってもらうしかない。
近隣住民が駐車場や畑などで利用したいと考えても、売買額はわずかなものだろう。

マンションの場合は、あくまで共同住宅であるため、問題はさらに複雑だ。マンションの空き家を所有すると、管理費や修繕積立金の負担も生じる。
また、マンション全体でみれば、マンション内の空き家が増加するほど、管理費や修繕積立金の徴収が難しくなる。
掃除などの満足のいく管理はもちろん、建物の修繕もおぼつかなくなり、住民が退去してさらに空き家が増える悪循環に陥る。

こうした事態に対し、空き家対策特別措置法の適用対象は主に一戸建てを想定しており、共同住宅に適用されたケースはごくまれだ。
空き家が売れない貸せないとなると固定資産税をはじめとするコストを支払い続けるしかなく、文字通り不動産を抱えることになる。
本格的な人口・世帯数減少はこれから始まる。

地方では現在、数百万かけて古屋を解体し、隣地の所有者にタダで土地を引き取ってもらうといった実施的なマイナス価格取引が行われている。
国土交通省が年1回公表する地価公示の価格はあてにならない。とあるベッドタウンの地価公示では、坪単価が約15万円とされてたが実際の取引は5万円に満たなかった。
現実には、成約にすらい経たない土地も複数存在する。
こうした事態に際し、国はまだ有効な解決策を見いだせていない。

少子化・高齢化と人口減少といった事態が本格化する未来を見据え立地に難のある空き家を抱えたら自分や親族が後に利用する予定がない限り、可能な限りの処分を進めたい

週刊エコノミスト2019.7.9より

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